目覚めた狼は思ったとおり。私へ危害を加えるどころじゃない。
尻尾を振りながら擦り寄って来るのに忙しかった。
「フェンリル」
酷い変わり様。その原因が、リーヴによって《マナ》ごと魂を乗っ取られてしまったことにあると思えばおかしくてたまらなかった。
普段は無表情を決め込んでいるくせ、あの人はいったいどれだけ私のことが好きなのだろう。
「それがあなたの名前」
名付けによって祝福を。
「今日からあなたは私のフェンリル」
抱きしめた体は温かった。
柔らかな毛並。たっぷりとして、疲れた体に眠りを誘う。
「あなたと出逢えて嬉しいわ」
フェンリルはビューレイストと同じ。リーヴとよく似た気配を持っていた。
当然のことだけど。
「これからよろしくね」
私のことを大切に、守ろうとしてくれる。
きっとずっと永遠に。
(沼に棲む長子/姫と賢狼。ふぇんりる)