キングズタワーの九十階にあるラウンジからは、ヘブンズ・カンパニー所有のメガフロートが一望出来る。
「――レイに見つかったら煩いだろうな」
ここから見える《全て》が私の《世界》だ。
「……わかってるわよ…」
多くの人が暮らし、魔法が溢れ、魔族が治める海上都市。この世で最も魔法が人の近くに在り、この国で最も豊かな街。私のために作られた箱庭。
「ラスの血か? それ」
「さぁ…? 血にしろ輝石にしろ、碌なもんじゃないわ」
「売れば億万長者」
「外れると思う?」
私はここから出られない。出てはいけない。
「外れないのか? …あいつも必死だな」
「見てて哀れになるくらい、ね」
広い世界を望んではいけない。夢見てもいけない。
「良いのか? それで」
「良いも悪いもないでしょう」
「言えば、外してくれると思うけどな」
欲を出しては、いけない。
「自分で自分の首を絞めるほど馬鹿じゃないわ」
「…それもそうか」
そうすれば生きていられる。
「で、何しに来たの? ヴェルメリオ」
「ラスがやけに浮かれてたから原因探りに。分かったからもう戻るわ」
「…あ、そ」
「せいぜいレイに見つからないようにな」
そうしなければ生きていけない。
「――誕生日おめでとう」
ここでなければ。
「…どーも」
(かごの鳥)